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朝日新聞 日本サッカー協会100周年企画 「あなたが選ぶ日本サッカー名勝負10番」(後編) #jfa #daihyo #nadeshiko #JFA100周年

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サポーティングカンパニーの朝日新聞では、日本サッカー協会の創立100周年を記念して「あなたが選ぶ日本サッカー名勝負10番」を募集しています。
https://www.asahi.com/sports/events/meishobu10/
今回企画のために選ばれた名勝負候補リスト250試合から、田嶋幸三会長が選ぶ日本サッカー名勝負10番(後編)をご紹介したいと思います。

前編はこちら

あなたが選ぶ名勝負10番

公益財団法人日本サッカー協会
会長 田嶋幸三

今年、日本サッカー協会は創立100年を迎えます。日本サッカー黎明期、過渡期、成長期と、その時代ごとに語り継がれる名勝負や歴史的な一戦がありました。1993年のJリーグ開幕と2002年のFIFAワールドカップ日韓大会以降、日本サッカーは長足の進歩を遂げました。サッカーの人気やレベルが上がるにつれて底辺も拡大。ユース年代や女子の選手の育成・強化も進み、有能な選手が続々と輩出されています。次の100年も日本のサッカーを彩る名勝負、名場面がその歴史に刻まれていくのでしょう。
さて、私が選ぶ「名勝負10番」――少年時代から最近の試合までを時代を追って振り返ってみたいと思います。

⑥No.109 1997年11月16日 FIFAワールドカップフランス’98アジア最終予選 日本vsイラン

やはりワールドカップ初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」は外せませんよね。
最終予選4試合を戦ったところで加茂周監督に代わって、コーチだった岡田武史さんが指揮を執ることになり、岡田監督の下でなんとか第3代表決定戦(プレーオフ)にこぎつけました。
日本は最終戦までアラブ首長国連邦と2位争いを演じていて、もう一方のグループはサウジアラビアとイランが首位争いを展開。どちらがプレーオフに進出するかわからない状況でした。
プレーオフを前に、サウジアラビアが2位になった場合、その開催地としてバーレーンを希望しているという情報が入ってきました。サウジアラビアにとってバーレーンはホームのようなもので、日本にとっては不利。ワールドカップ史上、ワールドカップに出場したことがない開催国はありません。日本がそんな不名誉な歴史をつくってはならないと、当時、2002年FIFAワールドカップ開催準備委員会の事務局長を務めていた小倉純二JFA専務理事(現、相談役)が奔走し、サウジアラビアと日本の等距離にあるマレーシアを開催地にすることでFIFAの了承を取り付けてくれました。
試合4日前まで順位が決まらなかったイランは2日前にマレーシア入り。焦っていることは明白で、その日の練習は大音量でコーランを流すなど日本を威嚇。試合前日は、非公開の練習が終わり、日本の報道陣が入場してしばらくすると、アジジ選手が倒れてロッカールームに運ばれ、ホテルでも車椅子を乗り回すなど明らかな陽動作戦に出ました。
試合は激しい点の取り合いになり、延長戦へ。なかなかシュートが決まらずやきもきしましたが、最後は岡野雅行選手がゴールデンゴールを決めて、日本は悲願のワールドカップへの出場を手にしました。日本サッカーの歴史の中で欠くことのできないゴールだと思います。
私はドーハ(の悲劇)のとき同様にテレビの解説があってこの試合を日本で観ていました。一方、ドーハで一緒に解説していた岡田さんは監督としてチームを率いていた。それがとてもうれしかったのをよく覚えています。

⑦No.182 2011年7月9日 FIFA女子ワールドカップドイツ2011 ドイツvs日本

グループステージで2勝したなでしこジャパンは、第3戦でイングランドに完敗しました。次の準々決勝の相手は地元・ドイツ。正直、ドイツ優勢が大方の見方だったと思います。ところが、その予想に反して日本は延長の末に丸山桂里奈選手のゴールで1-0と勝利しました。
試合後すぐに日本にいる友人や知人に電話をしましたが、明け方の試合ということもあって誰も観ていませんでした。まぁ、注目度は高くなかったですからね。でもこの勝利から「ひょっとしたら」という空気になっていきました。日本は好調の波に乗り、準決勝のスウェーデン戦を3-0で勝ち、そして、アメリカとの決勝戦を迎えます。
決勝戦の激闘は皆さんの記憶にも深く刻まれていると思いますが、決勝進出はドイツ戦の勝利が大きく影響したと思います。
今回のオリンピックは厳しい戦いになるとは思いますが、2011年大会の優勝経験者と、2014年のFIFA U-17女子ワールドカップ制覇、2018年のU-20女子ワールドカップ優勝を経験したメンバーが勝者のメンタリティーとなでしこらしいひたむきさで戦い、日本に再び歓喜をもたらしてくれるのではないかと期待しています。

⑧No.200 2014年1月13日 全国高校サッカー選手権 富山第一高校(富山)vs 星稜高校(石川)

富山第一高校と星稜高校という初の北陸勢対決となった決勝戦、序盤、主導権を握っていたのは富山第一でしたが、前半にラフプレーからPKを献上。後半もわずかな隙を突かれて追加点を許しました。ところが、富山第一は残り20分というところで超攻撃的な布陣に変更。息を吹き返した富山は猛攻を仕掛け、42分に1点を返すと試合終了間際にPKを獲得します。これを決めて同点としました。このPKを決めた富山第一の勢いは延長戦でも止まらず、後半9分、ついに決勝点となるゴールを決めました。
劇的な試合展開でしたが、それよりも両チームの真摯で純粋な戦いぶりが本当に感動的で、全力でプレーする選手たちの姿に誰もが感動と勇気をもらったと思います。高校サッカー100年の歴史に燦然と輝く名勝負だと思います。

⑨No.218 2016年12月18日 Alibaba YunOS AutoプレゼンツFIFAクラブワールドカップジャパン2016 鹿島アントラーズvsレアルマドリード

鹿島アントラーズがレアルマドリードを本気にさせ、Jリーグのレベルを世界に知らしめた一戦です。鹿島がレアルと互角に渡り合ったことが何よりうれしく、誇らしかった。
ジーコは「相手がどんなチームだろうと、ひるむな、怖がるな」と叩き込み、それがチーム・スピリットとして受け継がれてきました。先発を日本人選手だけで構成したのも特筆すべきことですし、“鹿島のサッカー”を貫いたことも素晴らしかったと思います。
Jクラブが国際舞台で勝てなければ、当然、日本代表も世界と伍していくことはできません。日本代表とJリーグは車の両輪だということを痛切に感じました。
試合が終わった後、各国のサッカー関係者から鹿島の健闘を称える電話があり、FIFAクラブワールドカップに対する関心と期待の高さを再認識できた大会でもありました。

⑩No.227 2018年6月19日 FIFAワールドカップロシア2018 日本vsコロンビア

大会直前にハリルホジッチ監督との契約を解除し、技術委員長だった西野朗監督の下に臨んだ大会で、選手たちは逆境を跳ね除け、強い精神力で戦ってくれました。
大事な初戦、スタンドには大勢のコロンビアサポーターがいて、さながらアウェイのようでした。しかし、試合開始早々に大迫勇也選手がシュート放ち、GKがはじいたボールに香川真司選手が反応。それを相手DFが腕でブロックし、日本はPKを獲得しました。このPKを香川選手が落ち着いて決めて先制に成功しました。開始からわずか3分のこと、まさに筋書きのないドラマです。チーム、関係者、サポーター、みんなの熱意が一つになったときにこういうことが起こるものなんですね。
「ワールドカップ優勝」という目標から目を逸らしちゃいけない、信じて追い続けていかなくてはいけない――その思いを再確認させてくれるゲームでした。ラウンド16の日本対ベルギー戦も後世に語り継がれる名勝負ですが、この初戦の勝利はJFAの会長として大きな責任を感じながら観た試合で、自分のサッカー人生に深く刻まれるゲームになりました。

番外編 No.14 1967年10月7日 メキシコオリンピックアジア地区予選 日本vs韓国

最後に番外編としてこの試合を挙げさせてもらいます。私の記憶の中にある試合で最も古いものです。小学校3年生でしたから、まだサッカーを始めていないとき。試合中継を実際に観ていたのか、あるいはその後にニュースで見たシーンが記憶に刷り込まれたのか、それがよくわからないのですが、とにかく、韓国のシュートがバーに当たったシーンだけが強烈に心に焼き付いているんです。10歳の頃の記憶があることが自分でも驚きであり、不思議な感じがします。

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今回、名勝負10戦を選ぶ過程において、日本のサッカーが右肩上がりに成長してきたことをあらためて感じることができました。しかも、その試合の多くを現場で直に観ることができたのはとてもラッキーだったと思います。
今の若い人たちの多くは、日本が弱小国だったことを知らないと思います。そういう歴史を後世に伝えていかなければなりません。急成長しているアジアの中で、少しでも手を抜いたり、歯車が狂ったりするとあっというまに追い抜かれてしまう。そのことを肝に銘じ、これからもサッカーの発展とサッカーを通じた国際親善に力を尽くしていく覚悟です。


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