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FIFA U-17女子ワールドカップヨルダン 2016に向けて「苦しいときに戦える選手たちを選んだ」(楠瀬直木監督)

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17歳以下の女子チーム世界一を決するFIFA U-17女子ワールドカップヨルダン 2016が、9月30日(金)に開幕し、U-17日本女子代表は2014年のコスタリカ大会に続く連覇を目指して戦います。ここではチームを率いる楠瀬直木監督が登場。前編と後編の2度に分けて、大会への意気込みを語りました。

――FIFA U-17女子ワールドカップ開幕まであとわずかです。

楠瀬 待ちに待った世界大会ですので、早く戦いたいという気持ちでワクワクしています。早く選手たちとヨルダンに向かって、開幕に備えたいです。

――昨年2月にチームが立ち上がってから、およそ1年半の道のりを歩んできました。

楠瀬 女子選手を指導するのが初めてのことでしたので、特に監督就任当初は少し戸惑いました。知らないことも多かったですし、U-16年代(当時)ではどの選手が代表レベルに達しているのか、その基準が分かりませんでした。選手たちを視察し始めたころは、「15歳、16歳の女子にこんな動きができるのか」と全員がうまく見えましたから(笑)。

ただ、その後、AFC U-16女子選手権中国2015の決勝で朝鮮民主主義人民共和国に負けて準優勝になったとき「ああ、これがアジアのトップクラスなんだな」と気づかされました。ドイツ、イタリア、そしてスペインといったチームを視察して、世界レベルを感じたことも大きかったです。チーム発足から現在に至るまでは、長いようであっという間でした。

――チームを組み立てる上で意識したことは何ですか。

楠瀬 根幹にあるのは「ボールを失わないこと」です。日本人の長所はチームワークと技術、勤勉な姿勢ですので、もともと備えている要素も生かしながらチームをつくりました。選手選考のときは、チームの中心となるグループを定めつつ、彼女たちが不動の存在にならないように肉付けしていったという感じです。

――競争を促すために、工夫したことはありますか。

楠瀬 選手が自分の基準をしっかりと持っているかを重視しました。他人との競争よりも、自分が少しでも向上しているか、自分の成長に目を向けているかという部分です。例えば、中距離走のタイムを計ったとき、2度目のタイムが1度目を上回った選手はチームに招集し続けました。みんな真面目で、与えられたタスクに全力で取り組んでくれるので、ほぼ全員が上回るんですけどね。

――今大会に出場する日本の選手たちの選考基準は?

楠瀬 一つは、「人間力」を持っているかです。サッカーというスポーツである程度の成績を収めるには、足が速いだけとか、技術を備えているだけでは足りません。頭を働かせること、劣勢をしのぐ粘り強さも求められます。

いい試合をしているときは、どんな選手を起用しても問題はないのですが、苦しい試合を強いられたときは、話が違います。これは日常生活にも当てはまります。追い込まれたとき、自分だけ逃げてしまうのか、それとも何とかしようと解決策を探るのか、あるいは人のために手を差し伸べるのか、苦しいときこそ人間力、その人の真価が試されます。

――どんな選手に人間力があると感じますか。

楠瀬 技術的には平均的だけど、合宿のときは必ずその選手の部屋に仲間が集まるという場合はリーダーシップがあるといえます。日常生活で、ほかの人が嫌がる仕事を自然に引き受ける選手は、ピッチでも身を粉にして働いてくれます。最後の最後で勝負が懸かったとき、どんな選手が頼りになるか。そう考えると、ボール扱いのうまさはそれほど重要ではないと思うんです。今大会に出場する日本の選手たちは、苦しいときに戦えます。

――代表チームとしての活動期間が限られている中、どのように選手の特徴を把握しようとしたのですか。

楠瀬 選手たちとは自然に接していました。チームの勝利のために何をすべきかと考える選手は、陰でも工夫しているものです。彼女たちは、短期合宿で急成長することは難しいと感じながらも、きちんと準備してくれます。そういう選手は、話をしていて分かりますし、サッカーノートにびっしりと課題や収穫を書いています。所属チームの監督に話を聞くと、独自の練習をしていた選手もいます。本当に代表チームに入りたい、世界大会に行きたいという思いやサッカーへの情熱は、日常生活の中でおのずと出てくるのだと思います。

――指導者としてのポリシーを教えてください。

楠瀬 「楽しむこと」です。サッカーはもちろんのこと、スポーツは本来、楽しむためのものです。スポーツに取り組んでいると自然に気分が高揚してきますし、自分が笑えば、ほかの人も笑顔になります。人の心を豊かにすることがスポーツの魅力ですから、試合中に目をつり上げて、チームメイトと何かを言い合うのは少し違う。ポジティブにやろうよ、と言いたいですし、明るい気持ちでプレーすれば勝利の女神も微笑んでくれると信じています。


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