Associate-Proコーチ養成講習会の第4回目の集合研修(モジュール4)が、4月12日(月)から4月16日(金)までの5日間、高円宮記念JFA夢フィールドで開催されました。
今回のモジュールでは、これまでの指導実践の集大成として、監督、コーチ、フィジカル、テクニカルの役割をおいた実戦形式による「マッチデーファンクション」と題したプログラムを実施。3日目には、横浜F・マリノスのトレーニングを視察しました。リーグ戦を2日後に控える中でのトレーニングを間近に見ることができ、またトレーニング後にはアンジェ・ポステコグルー監督、スポーティング・ダイレクターの小倉勉氏からコーチングに関する話を聞き、とても有意義な機会となりました。
また、その日の夜は、J1リーグ戦・川崎フロンターレ対アビスパ福岡戦の試合視察をしました。各グループで立場を変えて試合を分析し、翌4日目は、グループ毎にゲーム分析のプレゼンテーションを行いました。
4日目の午後は、救命救急の講習を受けた後、FIFAのHead of Women’s Football DevelopmentのArijana Demirovic氏より、FIFAの女子サッカー戦略についての講義を受けました。
最終日は、田嶋幸三JFA会長によるJFAの将来構想についての講話を聞き、日本の女子サッカーの将来をどう担っていくのか、それぞれに思いを強くして、5日間のプログラムを締めくくりました。
◯期間:2021年4月12日(月)~16日(金)
◯会場:高円宮記念JFA夢フィールド
◯スクールマスター:眞藤邦彦
◯コースダイレクター:小野剛、今井純子
4月12日(月)
講義:ガイダンス
講義:インタビュートレーニング
実技:指導実践
4月13日(火)
実技:指導実践
実技:マッチデーファンクション
講義:振り返り
講義(オンライン):Women's Football, AFC Technical Session(講師:今井純子氏)
グループワーク:ゲーム分析
4月14日(水)
視察:Jクラブトレーニング視察(横浜マリノス)
視察:J1リーグ戦視察(川崎×福岡)
4月15日(木)
グループワーク:ゲーム分析
講義:プレゼンテーション
実技:救命救急
講義(オンライン):FIFA女子サッカー発展戦略(Arijana Demirovic 氏(Head of Women’s Football Development, FIFA))
4月16日(金)
講義:JFAの将来高層(講師:田嶋幸三氏)
講義:健全育成クラブについて、振り返り
スクールマスターコメント
眞藤邦彦さん(JFAインストラクター)
モジュール1の「哲学」に始まり、モジュール2では各自の「プレーモデル」を深めていく実践を経験しながら、モジュール3では「監督采配」へと進めてきました。モジュール4では「チームマネージメント」をテーマに、クラブ訪問やゲーム視察を通して学習の内容を深めていきました。事前にJFAテクニカルハウスリーダーの片桐氏よりデータサイエンスの現場活用の実態についての講義を受けた後、横浜F・マリノスをクラブ訪問しました。翌日はアウェイへの移動日であるにも関わらずトレーニングを見学させていただき、トレーニング後にアンジェ・ポステコグルー監督との質疑応答もありました。綿密で計画的なトレーニングプランやデータの活用、そしてスタッフワークの緻密さを目の当たりにして、受講者は驚きを隠せなかったようです。クラブや監督の丁寧な対応に感謝しています。
等々力サッカー場でのゲーム分析では、川崎フロンターレ対アビスパ福岡の試合を視察しました。ここでは次節の川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島、そしてアビスパ福岡対FC東京の4グループに分かれ、それぞれのグループでスカウティングを行いました。グループ分けはモジュール4の集合前にしていたので、受講生は事前に打ち合わせをし、担当チームや対戦相手のゲームを2~3試合を見てゲーム分析を行いました。各グループがどこまでの準備をしてくるか楽しみにしていましたが、予想をはるかに上回る詳細な準備で、私自身大変驚かされました。ゲーム視察後も、夜遅くまで、また翌朝早くからグループワークをし、発表の準備をしていました。監督に対してプレゼンするグループや、事前にコーチ陣との打ち合わせミーティング用のプレゼンをするグループ、プレーヤーに対するミーティングを行うグループとプレゼンの対象や場面設定をして分析結果を発表しました。ディスカッションでは、次節に対戦するための修正や戦略を練るところまでの演習をしました。模擬とはいえ、発表後のディスカッションは、実戦さながらの雰囲気でした。監督の質問やプレーヤーからの質問、意見が飛び交い、スカウティンググループが応答していく中で、次節に向けての修正、戦略を深めることができました。
プレマッチデーファンクションでは、監督、コーチ、GKコーチ、フィジカルコーチ、テクニカルスタッフと役割を決め、江戸川大学のプレーヤーに実践をしました。プレーヤーは、午前中に指導実践を行っており、疲れていたと思います。ところが、試合前ミーティングから、個々の役割やチームのコンセプト、何よりも勝たなければならないゲームが目の前にあるということを伝えられ、大きく目を輝かせて、代表ピッチであるAピッチに飛び出していきました。試合中には、インカムを通してテクニカルスタッフとベンチとのやり取りがなされていました。また、ハーフタイムに、スタッフでプレーヤーに見せるビデオの選択や順番、ミーティング内容の確認をしている姿は真剣そのものでした。タイムアップの笛が鳴った時、敗戦チームは悔しさを表現し、勝者は喜びを爆発させました。そこには、全力を尽くして最後まで戦ったチームの姿がありました。
これまでの学習の積み重ねと、この度のクラブ訪問やゲーム視察を通して、受講者の成長ぶりが最後のマッチデーファンクションで表現されていたと思います。スクールマスターが期待していた以上の成果があったと感じています。
毎回、モジュール後にメディアブリーフィングが行われ、受講者は緊張しながらも異口同音に「緊張したけれどよい機会が得られた」と感想を述べていました。これもリアリティーの追求の一助になったと思います。メディアの方々やメンタリングサイクルにおいて個別に指導してくださったメンターのみなさん、江戸川大学サッカー部の皆さん、そして何よりもA-proライセンスコースへ快く派遣してくださった受講者の所属長の方々のご理解に、改めて感謝いたします。
受講者は5月のモジュール5でこれまでに培った実力を試す場が控えています。次は海外研修とまだまだ研修は続きますが、皆さまには、これまで以上のご理解とご支援をお願いします。A-pro 卒業後の彼女たちのますますの活躍を楽しみにしながら、モジュール4の報告とさせていただきます。
受講生コメント
坂尾美穂さん(びわこ成蹊スポーツ大学女子サッカー部監督)
モジュール4では、指導実践としてゲームコーチングとマッチデーファンクション、横浜F・マリノスのトレーニング視察,J1リーグ・川崎フロンターレvsアビスパ福岡のゲーム視察、試合後のゲーム分析とプレゼンテーション、そしてAFCとFIFAの女子サッカーに関するWEB講義、最終日には健全育成クラブについての講義と田嶋会長からのJFAフューチャーと題した講義を受講しました。
多岐にわたる講習内容から、監督やコーチだけではない様々な立場からの現場への関わりについて学びました。
横浜F・マリノス訪問においては、リーグ戦2日前のトレーニングを実際に見学できたことは、普段、女子カテゴリーの現場で活動している我々受講者にとって大きな学びとなりました。トレーニング視察とトレーニング後のアンジェ・ポステゴグルー監督との質疑応答において、「これは私のスタイルだ.皆さんもそれぞれ自分なりのスタイルを持ってほしい」、「私は今でも学び続けている」、「選手はそれぞれ幾つかの(プレーにおける)答えを持っている」、「プレーにおける解答は選手自身が見つけなければならない」といったコメントをいただきました。また、ピッチ上のコーチングにおいても、私がこれまでJFAのライセンス講習会で得た学びと共通するものが多々あり、海外のトップレベルの指導者も、サッカーのコーチングにおいて大切だと感じていることには、我々の現場と共通する部分が多くあることを確認できたことは大きな学びとなりました.
今後、メンタリングを経て5月に開催されるモジュール5へと進んでいきますが、メンタリングでのメンターとの問答には、日本のトップレベルの知見や日本から見た海外、海外からみた日本といった視点がちりばめられています。メンターやインストラクターが発する言葉の意味を深く理解できるよう、成長を続けたいと思います。
私たちが質の高い学びの機会を得ることができる背景には、多くの方々のお力添えがあると思います。心から感謝いたします。