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[特集]部活動の実情とこれから 事例紹介~部活動の形とは~vol.03 「選抜」を女子全員の受け皿に 神奈川県中学校体育連盟サッカー専門部・横須賀ブロック後編 #jfa #nadeshiko

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部活動の形は一つではない。地域や環境によってさまざまな課題があり、それぞれに合った取り組みがある。
今回は、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」に沿った形で活動しながら全国大会に出場した品川区立荏原第一中学校、JFAが作成した「中学校部活動サッカー指導の手引き」を活用している近江八幡市立八幡西中学校、合同部活動として地域の生徒を迎え入れている横須賀ブロック、学校と地域クラブの連動を実現している幕総クラブの事例を紹介する。

※取材は2m以上の距離を確保し、インタビュアーはマスクを着用して実施
※本記事はJFAnews2020年4月に掲載されたものです

前編はこちら

上達させたいけれどまずは場をつくること

横須賀ブロックにはベースとなる選抜強化講習会の仕組みがあったが、女子チームの指導に関してはそれがなかった。そこで女子選抜の初代監督を務めることになった熊谷氏は、各地に赴いてJFAナショナルトレセンなどの活動を見学した。「女子に携わっている指導者のコーチングは驚きでした。選手への接し方が柔らかく、丁寧。練習後のさりげないアプローチもすごく勉強になりました」と、ナショナルトレセンコーチの指導からノウハウを学んだ。
こうして14年、横須賀ブロックで女子選抜の活動がスタートした。
男子の場合は文字通り選手を「選び抜く」が、女子は総数が30名未満であるため、参加意思のある選手は全員が参加できる。熊谷氏は女子選抜の活動について「もちろん上達させたいけれど、まずは場をつくること」と、強化以上に育成や普及を重視している。「女子同士がプレーできる場を設けることで、純粋にサッカーと向き合える場をつくってあげたいと思った。1年目に希望者を募って23人でスタートしたときは規律を徹底することから始めました」
熊谷氏の言う「規律」とは、集合時間を守る、忘れ物をしない、あいさつや返事をするといった基本的なこと。それは、ピッチ外だけではなく、ピッチ内にも及んだ。
「中には思いをうまく表現できない子もいます。プレーがうまくいかなければ、イライラしたり、前向きになれなかったり。もちろん、技術面の指導もしますが、最も強調したのは『年齢は関係なく、こうして集まっているからには元気に、前向きに、みんなでやっていこう』ということです」
それまで所属するチームでは試合に出場できなかった女子が、選抜チームでピッチに立つことで新たな役割を担う。選抜の活動では、普段は男子に遠慮していた上級生の女子が下級生を引っ張り、下級生が上級生を支えるような姿も見られるようになったという。そして、チームに戻ってからも、女子の選手たちがそれまで以上に積極的にチームに関わる姿が見られるようになった。「(所属するチームでは)3年生になると、女子選手はベンチに入ることが多くなります。それでも努めて男子に声をかけたり、ウォーミングアップを入念にやったり、そういう姿を見て『女子部門を設けて良かった』と思いました」と熊谷氏は語る。
これまで6年間にわたってこの活動を続けてきたことで、女子のベースアップにつながっている。
「少子化の影響を受けてサッカー部に入部する子どもの数が減少し、男子の活動自体が縮小している影響もあるかもしれない」と前置きした上で、「女子選手が自分のチームに戻ってからも、試合に出るケースが目立つようになってきました。中にはチームの攻撃の起点になるような選手もいます。同時に、男子選手も感化されたり、先生方の指導力の向上につながっています」と熊谷氏は言う。

自分のビジョンをいかに周りに広げるか

成果が出ている一方、課題も見えてきた。それは、中学生年代での女子サッカーの普及率が低いことだ。実際、神奈川県の中学校地域で女子選抜の活動をしているのは、8地域中4地域であり、選抜チームを結成できたとしても、彼女たちが戦う公式戦の場が整備されていない。
中学年代で女子サッカーが行われていることを認知してもらうために、中学生の県大会が地元・横須賀で行われるときには、男子の試合の合間に女子チームのエキシビションマッチや女子選抜の練習を組み込み、指導者や保護者へのアピールを続けた。
こうした活動の甲斐あって、女子選抜がまだないブロックの、数名の女子が所属している中学校から横須賀ブロックの選抜練習会に参加の打診があり、合同練習が実現したケースもある。それでも全体としての認知度や活動率はまだまだ低いのが現状だ。
「男女に関わらず、神奈川県全体の『中学』の活動をより活性化させたい。神奈川県の全ての地域で『部活動』を選んでくれた男子はもちろん、女の子たちにもサッカーに集中でき、楽しめる環境をつくってあげたい。それをベースにして少しでも日本代表につながっていく選手が出てきてほしい」(熊谷氏)
女子選手を育成するためには、男性はもちろん、女性の指導者の増加も望まれる。日々の練習や遠征はともかく、ピッチ外でも女子に寄り添うことができる女性の引率者が必要になってくるからだ。
女子の選抜活動を始めようと考えている地域へのアドバイスとして、熊谷氏は「人材」の重要性を説く。
「横須賀ブロックでは、同じブロック内の中学の指導者や先輩方から『一緒にやろう』と言っていただきました。仲間として共に活動してくれる先生たちの存在が本当に大きかった。決して一人ではできない。感謝しています。いかにビジョンや夢、志を多くの先生たちに広げて『共鳴』していけるか。これは女子サッカーの発展に限らず必要な要素だと思います」
中学年代の女子選手たちは、なかなか自分たちに合った活動の場を得られない。それでもサッカーをプレーすることを選ぶ彼女たちに適した場所をつくるためには、個々の思いのほかにも周囲の理解と協力が必要なのだ。

vol.04は9/16掲載予定です。


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