3月11日(水)、なでしこジャパンは2020 SheBelieves Cup最終戦となるアメリカ女子代表戦に臨みましたが1-3で破れ大会を4位で終えました。
ダブルヘッダーの2試合目となったこの日の試合は、日中の暑さも落ち着いた19:08にアメリカのボールでキックオフしました。高倉麻子監督は第2戦にセンターバックで出場した三宅史織選手と土光真代選手を両サイドバックに配置し、フォワードの田中美南選手を右サイドハーフで起用します。キックオフ直後のアメリカの攻撃を巧みなラインコントロールでオフサイドにかけ、落ち着いた立ち上がりを見せた日本でしたが、開始7分、中盤でボールを失うとこれを田中選手がファウルで止めてフリーキックを与えます。ペナルティエリアをわずかに出た正面からのフリーキックを、FIFA女子ワールドカップフランス2019得点女王でMVPのミーガン・ラピノー選手に豪快に決められて先制を奪われます。
出鼻をくじかれた日本はその後、前線の菅澤優衣香選手にボールを集めて反撃の糸口を探り、守備でもラインを高く保ってアメリカの攻撃の芽を摘みます。しかし26分、GK山下杏也加選手のパスがラピノー選手を超えずにカットされると、ゴール前中央でフリーで受けたクリステン・プレス選手にループシュートを決められて追加点を許します。
日本は2失点した後も焦らずに自陣から組み立てるサッカーを展開し、最終ラインから丁寧に繋いでアメリカゴールに迫ります。しかしアメリカの選手の出足の速さと対人の強さの前になかなかチャンスを作ることができずに時計が進みます。そんな中、この日左のセンターバックに入った南萌華選手から右サイドバックの土光選手への鋭いグラウンダーのパスを通すと、田中選手がもう一つ高い位置でボールを引き出してから、ペナルティエリア内に侵入した籾木結花選手を狙った一連の流れは、日本が目指す攻撃の形を表したものでした。
前半は0-2で折り返すと、すっかり日も暮れた後半開始から日本は田中選手に変えて岩渕真奈選手を投入し、菅澤選手とのツートップを形成、籾木選手を右サイドに移し、攻撃に変化を加えます。岩渕選手のボールキープによって全体のラインを押し上げる時間を作り、徐々に日本らしい形が増え始めた58分、3試合を通じてトライしてきた最終ラインからの粘り強いビルドアップから、杉田妃和選手が中央をドリブルで持ち上がり右サイドの中島選手に展開。ペナルティエリア内で折返しのパスを受けた岩渕選手が狙いすまして放ったシュートはアメリカゴールの右サイドネットに突き刺さって1点を返します。
自信を取り戻し始めた日本は、その後も積極的なサッカーを展開し、67分、69分とチャンスを作り、75分には三浦成美選手が放ったシュートが惜しくもポストを叩きますが得点には至らず。チャンスを活かせずに迎えた83分、コーナーキックをリンジー・ホラン選手にピンポイントで合わせられて1-3と突き放されると、残りの時間で投入された植木理子選手の積極的な仕掛けも実らず試合は終了。この結果、アメリカが全勝で優勝を飾り、2勝のスペインが2位につけ、1勝のイングランドが3位、日本は勝ち点を上げることができずに4位で大会を終えました。
監督・選手コメント
高倉麻子 監督
今日の試合もそうでしたが、3試合ともやってはいけないミスから自分たちでゲームを壊してしまったというのが正直なところです。それが今のチームの集中度のなさや、選手自身の状態だと感じています。ただ、今日の試合では攻守において自分たちのやりたいことが出せていたと思いますし、その部分はプラスに捉えています。とにかく勝負どころでの集中度をチーム全体で出していくこと、危機感を出せないところが試合に負けてしまう原因と捉えています。この結果だけを見たら金メダルは難しいと思われるかもしれませんが、私も、選手の誰一人も金メダルを諦めていません。なでしこのサッカーは精密機械のようなもので、歯車が一つ狂ったり、ネジが一つ壊れたら機能しなくなると行っても過言ではないので、そういった意味では部品が噛み合わなかった大会だったとは思います。しかし、部品を一つずつ見れば、選手がやれることや役割というのは見えましたし、とにかく階段を一つずつ登っていって、最後には必ず自分たちが勝つという気持ちでやっていきます。
DF #4 熊谷紗希選手(オリンピック・リヨン/フランス)
後半1点を返してさらに反撃をしていく中で、セットプレーから失点して勝負を決められてしまうのは、できたこともあった試合ではありましたが、勝負どころで相手の強さを見せつけられました。自分たちはボールを保持してゲームを運びたいという中で、自らのミスで失点という形だったので、繋ぐかどうかという判断も必要ですし、技術の精度など、意識の部分でも全員で徹底し、修正していかないといけないと思いました。こういった相手との対戦で、できたことやできなかったことをそれぞれが受け止めて進むしかないと思っています。
MF #10 籾木結花選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
90分を通して自分たちのミスで3失点して負けてしまったのはすごくもったいないと思う反面、過去2、3年と自分がなでしこジャパンの選手としてアメリカと戦う中で、アメリカに対して主導権を握って試合を進める時間が長くなってきているのは実感としてあったので、足りないところはまだまだたくさんありますが、それでも積み上げているものはあるので、東京オリンピックまであと4ヶ月、最後に勝つのは自分たちだというところを忘れずに残りの時間を積み上げていきたいと思います。去年ワールドカップのベスト16で負けてから、毎回毎回自分たちは世界一を目指すと改めてチームとして願っていますし、それが日々のトレーニングにも表れているので、今回この大会では1勝もできませんでしたが、それでも自分たちがやっていること、目指している方向は間違っていないと感じます。個人としても昨年よりも個で相手に勝負していく機会が増えたと思うので、そこは昨年からの成長というか、意識の変化というか、自分も変われた部分があると感じているので、前向きに捉えていきたいと思います。
FW #8 岩渕真奈選手(INAC神戸レオネッサ)
早い時間に失点してしまって面食らった部分はありますが、3試合の中で一番自分たちがやりたいことが形として出ていたと思います。アメリカが落ちていたというか、スペースが多く生まれた中である程度攻撃はいい形でできましたが、相手どうこうというよりは、自分たちが主導権を握って1戦目、2戦目が戦えていたら、もう少しいいサッカーができたと思うので、そこはこの大会を通じての課題だと思っています。シーズン開幕前で身体が鈍いと感じる部分もありますが、この時期にこの強い相手と中2日で3連戦できて、きついですが、それは相手も条件は同じなので、オリンピックに向けていいシミュレーションになりました。
スケジュール
2020 SheBelieves Cup | ||
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3月5日(木) | 1-3 | 第1戦 vs.スペイン女子代表(Exploria Stadium) |
3月6日(金) | AM | トレーニング ※非公開 |
3月7日(土) | TBC | 公式練習(Red Bull Arena) |
3月8日(日) | 0-1 | 第2戦 vs.イングランド女子代表(Red Bull Arena) |
3月9日(月) | AM | トレーニング ※非公開 |
3月10日(火) | TBC | 公式練習(Toyota Stadium) |
3月11日(水) | 1-3 | 第3戦 vs.アメリカ女子代表(Toyota Stadium) |
※時間はすべて現地時間です。
※スケジュールや会場は急遽変更になる場合がございます。
2020 SheBelieves Cup
大会期間:2020年3月5日(木)~2020年3月11日(水)
会場:アメリカ/Exploria Stadium、Red Bull Arena、Toyota Stadium
女子出場国:スペイン、イングランド、アメリカ、日本
テレビ放送:日本戦全3試合をNHK BS1にて中継