FIFA女子ワールドカップフランス2019が6月7日(金)に開幕します。ここではなでしこジャパンの高倉麻子監督にチームづくりの過程や目指すサッカーについて聞きました。
――2016年にチームを立ち上げてから選手の成長をどのように感じていますか?
高倉 最初のメンバー発表のときに「競争が必要なので、一年後に同じメンバーがいるかどうかは分からない」という話をしてから選手を読み上げました。実際に今までの約3年間で可能性を感じた選手はたくさん呼んできました。選手は試合の中で成長するので、未熟な部分があっても積極的に選手を登用して、全く新しいチームということもあったので、なかなか試合に勝てないときもありました。ただ、代表がこれから強くなっていくためには必要な時間だったと思っていましたし、特に大きな不安を感じていたわけではありません。
――勝てていなかった原因は。
高倉 いろいろな選手を起用してきたので、コンビネーションを含め、チームとして難しい部分がありました。負けていい気分はしませんでしたけども、積み重ねと考えれば、通らなくてはいけない道と信じてきました。勝てないからやることを変えようということは一切考えていなかったです。
――2018年にAFC女子アジアカップで優勝したことはターニングポイントになったのではないでしょうか?
高倉 監督に就任してから大きなターゲットは、ワールドカップ予選を兼ねた女子アジアカップだったので焦点を合わせていました。本番は簡単ではないと思っていましたが、選手が非常によく頑張って、踏ん張って、粘り強い戦いをしてくれた。まだまだ成熟していないチームではありましたが、勝利をもぎ取ったことで選手にも自信が芽生えたと思いますし、あの大会でチームが一つになってきたと感じました。
――その後も海外遠征などを重ねチームをつくってきましたが、改めて日本サッカーの良さは。
高倉 2月と4月の遠征で世界一を狙ってくるチームと対戦できたことは大きな収穫でした。その中で改めて日本のサッカーは他とは違うと感じました。相手の爆発的なパワーや高さによって強い圧力を受けてしまう部分もありますが、私たちは全員が関わって、丁寧にサッカーをする中でチャンスをつくり出します。他の強豪国が単純にクロスを上げてきたり、一人のドリブルで打開したりするスタイルがほとんどの中で、私たちはチームとして戦う。他のチームにはないつながりを見せてゴールを奪ったり、ゴールを守っていくことが日本の特徴だと思います。そういったサッカーをしているチームはほとんどないので、日本のサッカーを世界に見せたいという思いもあります。
――どのようにチームを仕上げていきますか?
高倉 各国も女子サッカーに力を入れて急速なレベルアップをしているので、簡単な大会ではないということが言えます。フィジカルをベースにサッカーをしてくる相手に対して、チームとしてコンビネーションを極めていきながら賢く戦いたい。相手のパワーをどうやって削ぐかがキーになると思います。真っ向勝負というよりは、少しずらすようなサッカーをグラウンド上で表現できれば、いい戦いができると思います。その戦い方をつかめるかどうかは大きなこと。大会の雰囲気や相手のレベルを見る中で、選手にそういったことを伝えて、少しずつチームに落とし込めればいいと思います。
――直近のヨーロッパ遠征でも、攻撃時に相手の強いフィジカルを無効化するようなパスワークが見られました。そういったシーンを増やしていきたいということでしょうか。
高倉 そうですね。どこのチームも守備の意識は強いですし、以前と比べて組織も整ってきています。前線から積極的にボールを奪いにくる意識が高く、完成度も高い。とにかく自分たちがボールを奪ったあとの組み立ての部分はすごく大事だと思いますし、そこで引っかかっていると、ずっと相手の攻撃を受けることになります。ピッチの半分から前にしっかりボールが運ぶことができれば、攻撃陣のゴール前に入っていくときのアイデア、はまったときのテクニックやコンビネーションは、相手が取りに来ても取られない巧さがあります。守備を整えることは必要ですが、もっと積極的な発想をすれば攻撃陣は得点できると感じています。ここまでセットプレーには手をつけていないので、そこでの得点も増えてくると思います。失点をしてしまったとしても、「このチームは点を返せるぞ」というように最後まで積極的に点を取りにいけるチームにできればいいと思います。
スケジュール
FIFA女子ワールドカップフランス 2019
大会期間:2019年6月7日(金)~2019年7月7日(日)
グループステージ:
2019/6/11(火) 01:00キックオフ(日本時間)
vs アルゼンチン代表
2019/6/14(金) 22:00キックオフ(日本時間)
vs スコットランド代表
2019/6/20(木) 04:00キックオフ(日本時間)
vs イングランド代表