2016年4月に高倉麻子監督がなでしこジャパン(日本女子代表)の監督に就任してから、約1年半が経過しました。
「私の役目は今まで積み上げてきたものにさらに磨きをかけて、もっと高いところへ選手を連れて行くことだと考えています」
男女を通じてトップカテゴリーで初の女性指揮官となった高倉監督は、監督就任記者会見で話した通り、これまで意欲的に活動を続けてきました。
「2020年の東京オリンピックでメダルを獲ることが大きな目的」と掲げる高倉監督となでしこジャパンは、多角的に強化に励んでいます。例えば、今年1月に行われた国内トレーニングキャンプでは、元陸上選手の朝原宣治氏を招いてスプリントトレーニングを実施しました。
フランスでプレーするDF熊谷紗希選手(オリンピック・リヨン)が「骨格が違う外国人もこういったスプリントトレーニングをする中、日本もここに着手しなければ差は広がるばかり」と歓迎すると、高倉監督も「日本人はフィジカルが弱いと言われたくないし、それを敗戦の言い訳にはしたくない」と、世界との差を縮める努力を惜しまない姿勢を示しています。
この特別なトレーニングに参加した選手たちは一様に新鮮な眼差しで、効率的な足の動かし方といったスプリントの基礎を学びました。サッカーがうまくなるための直線的な練習だけでなく、競技の垣根を越えた様々なアプローチで強化を図ろうとする高倉監督の新しい発想により、選手たちはサッカーという競技と改めて向き合ういい機会となりました。
そういった選手個々の基礎的なスキルを磨く一方、なでしこジャパンは、積極的に世界の強豪国との実戦経験を積んできました。高倉監督就任後のなでしこジャパンは、国際親善試合や国際大会を含め、全13試合を戦い、4勝3分6敗の成績を残しています。
勝敗数だけを見ると、なでしこジャパンがどの大会でも常に勝者であったと言えないのは事実です。しかし、FIFAランキング1位の強豪アメリカから、今年開催された女子ユーロで優勝するなど成長著しいオランダといった国まで、様々な特色を持ったチームと多く対戦し、時にはこれまで経験してきたポジションやフォーメーションに捉われない柔軟な戦い方で、真剣勝負に挑んできました。
3月のFPFアルガルベカップ2017(開催地ポルトガル)では6位で大会を終えることになり、チームは今一度、足元を見つめ直しました。また、7〜8月に行われた2017 Tournament of Nations(開催地アメリカ)では、世界の強豪を相手に1勝もできず帰国するという忘れられない悔しさも味わいました。しかし、計5回に及ぶ海外遠征を敢行する中で、選手たちはその度にたくましさが増し、高倉監督が考えるサッカーも徐々に浸透してきています。
高倉監督は、JFAナショナルトレセンコーチを経て、U-16/U-17日本女子代表監督、U-18/U-19/U-20日本女子代表監督と、育成年代で長く指導を行ってきました。それだけに、若い選手の成長に大きな期待を寄せています。しかし、U-16日本女子代表監督就任時には「この年代が東京オリンピックでちょうどいい年齢なのは確か。だけど、現時点で分かっているのはそのことだけ。実際にいい状況でオリンピックを迎えられるかは本人次第」と話している通り、厳しい目も持ち合わせます。
その一方で高倉監督は、国内外で活躍する選手には、必ずなでしこジャパンへの道を開いてきました。それは、プレナスなでしこリーグ2部チームに所属する選手を、なでしこジャパンに招集したことからも分かる通り、「日本代表はその時に一番良いパフォーマンスをしている選手が基準。年齢で区切ることはしたくない」という強い信念を持っているからです。
もちろん、今回のMS&ADカップ2017のために招集されるなでしこジャパンのメンバーも、その例外ではありません。これまでなでしこジャパンに貢献してきた選手と、なでしこジャパンに新たに加わった選手とが融合して、新しいチーム作りをする過程の中に、今回のMS&ADカップ2017はあります。
なでしこジャパンにとっては、12月に行われるEAFF E-1 サッカー選手権 2017 決勝大会(開催地千葉)や、来年開催されるAFC女子アジアカップ2018(開催地ヨルダン)に向けた、非常に重要な真剣勝負の場となります。MS&ADカップ2017のために来日するスイス女子代表は、ヨーロッパの中で最も伸び盛りなチームのひとつ。対戦する両チームにとって、今回の一戦は貴重な経験となるはずです。
なでしこジャパンが、再び世界をリードするために。
開催地の長野市をはじめとした日本中のサッカーファミリーから熱い声援を受け、なでしこジャパンはMS&ADカップ2017で、勝利にこだわって最後まで全力で戦う姿をお見せします。
2017/10/22(日) 16:30キックオフ(予定)
なでしこジャパン(日本女子代表)対スイス女子代表
長野/長野Uスタジアム